サン・スマイル=無肥料自然栽培

肥料をやらずに作物を立派に育てる

  • 無肥料自然栽培が必要とするもの


    無肥料自然栽培家 成澤農園

     このほかに注目すべきものは「種」です。現在国内で使われている多くの種はF1(エフワン:一代交配種) といわれる種で、90%近くは海外から輸入されていますが、はるか遠い国々で採取された種が果たして日本の風 土にすぐに適応できるのでしょうか。適応しづらいとなれば、当然の結果として農薬・肥料に頼らざるを得な くなるでしょう。


    無肥料自然栽培家 折笠農場

     しかし、数ある種の中からその土地や栽培者に合った固定種を選び、数年から数十年かけて根気よく自家採種を続けることで、土地の気候や土壌に適応した世界に二つとない種が出来上がります。固定種は多くの遺伝子の発現を内在させているので、比較的多くの地域になじんでいくことができます。
     種採りは種類によっては多くの手間がかかりますが、続けるうちに、作物がその土地に適応していくさまを目の当たりにしたり、さらには収量や品質の向上を実感できたりすると、それまでの苦労が吹き飛ぶほどの喜びが得られるのだそうです。
     まさにこの自家採種こそが、無肥料自然栽培に近づくためには非常に大きなポイントなのです。

    ※  しかし世界全体の動きを見ると、わずか5社ほどのバイオ企業が世界じゅうの企業を買収し、お隣の韓国でも、大手種苗会社はすべてが外資になるといった憂うべき事態となっています。
     さらに、F1技術の最先端である雄性不稔という技術は、花粉の能力が不全だったり、雄しべが奇形であるような作物をわざと作るというもので、人間で言えば無精子症などに相当します。玉ねぎにいたっては現在、雄性不稔の性質を持つ5系統の遺伝子による品種の種しか売られていないといわれており、世界じゅうで栽培されている玉ねぎのほとんどは、決して花粉の出ることがない『奇形玉ねぎ』なのです。
     つまるところ、子孫(種)のできない作物だらけになれば、それだけ種がたくさん売れて儲けられるという種苗会社の目論みに基づく戦略により、世界じゅうから農の永続性が奪われ始めているのです。
    日本国内でもニンジン、トウモロコシ、ネギ、キャベツ、大根、カブ、白菜、ビートなどが次々に雄性不稔で作られるようになり、近年その数は急速に増してきています。

     
  • 無肥料自然栽培における窒素

     無肥料自然栽培においても、圃場で旧来から施用し続けてきた肥料が表土から数十センチに分散してしま い(層がある場合も)、残存した窒素(可給態窒素)が作物の根張りを妨げたり土中の温度を下げたりすること があるようです。それがまぎれもない事実であれば、可給態窒素を取り除く必要がでてきます。(硬盤層につい ては後述)

     しかしながら、土壌中の窒素や硬盤層のおかげで、作物が病虫害にかかりにくくなっているのではないかと考える生産者がいます。
     もちろん、現時点ではそれを照明する手立てはないのですが、現在の農学による理解だけでは計り知れないことが実際に起こっているというのは興味深いことだと思います。

     一般に病害虫は糖分の高さによって罹患率が高まると考えられているようですが、実際は可溶性窒素とリン酸化合物の植物体内含有量によっても高まることがわかっています。
     しかし、必要な窒素分が植物に供給されなければ作物が育たないこともまた事実であるので、ときには人為的に窒素を施さなければならないのでは?という疑問が生じます。

     ところが土壌の中には、マメ科根粒菌リゾビウムのように窒素を固定する働きを持った菌が存在しています。 リゾビウムは特定作物の根圏に存在するので、どの土にも含まれているわけではありませんが、世界じゅうで 使用されている化学窒素肥料の窒素量が60.2kg/ha であるのに対して、マメ科植物を有効に使った場合の窒素 固定能力は66.7kg/ha とこれを上回ります。


    無肥料栽培・自家採種5年目
    生育のばらうきはあるが虫は軽微、病気は皆無

     もうひとつはアゾトバクター等の土壌菌です。これら硝化菌は土壌中いたるところに独立して存在していま す。土壌消毒剤(soil fumigant, soil fungicide)を使うと80%が死滅してしまうことがわかっていますが、薬 剤を使用しない土壌においては、こうした微生物や小動物による自然窒素固定は50〜280kg/ha にのぼるといわれます。
     また、腐植(土壌中の微生物によって有機物の分解と再合成によって作られた土壌固有の難分解性・暗色無定 型の高分子有機化合物)には5%の窒素が含まれています。例えば腐植含有率4%の土壌なら、地下15cm の 表層に90 トンの有機物があるとして、そこには4500kg/ha の窒素の備蓄があると計算することができます。

     また、植物の生理を考え、中耕などの管理を適期に行うことも大切です。中耕を行うことにより、好気性菌の活動が活発になり、根張りが進んで窒素が供給されるといいます。

  • 無肥料自然栽培における病害虫


    無肥料自然栽培家 棚宗サラダ農園

     植物は播種から定植、栄養成長から生殖成長、開花期、結実期等、それぞれの時期によって生理形態が変わり、加えて気候が大きく変化した際には病害虫にかかることが多々あります。

     病害虫については、その根本原因を多角的に観察することが最も肝要なことだと思います。季節や土壌、種、栽培管理等についてしっかりと考察する必要があるでしょう。しかし多くの生産者の実感として、無肥料自然栽培や自家採種を続けていくにつれ、病害虫に悩まされることが減ってくるという話をよく耳にします。
     適地でない場所で時期外れの作物等を栽培しようとすれば、当然のことながら農薬、化学肥料の使用や、接ぎ木等の技術が前提となってしまいますが、無肥料自然栽培ではあくまでも適地・適作であることを最優先し、自然に逆らった栽培計画は極力避けるようにしているからです。。

  • 森の木々たち、野生動物に学べ

     森の木々たちは人為的肥料を全く与えられません。森であれば落ち葉がありますが、街路樹や庭木の場合は落ち葉さえもきれいに掃除され、有機物がほとんどまったく与えられなない状態で立派に育つものがたくさんあります。

     キリンやシマウマ、ゾウといった野生動物は、草食性なので草しか食べません。現代栄養学の常識から言えば極度のたんぱく質不足で栄養失調をもたらすような偏った食生活であるはずなのに、みな巨大で頑強な体を作り上げているのはなぜなのでしょうか。

     ほかに有名な鶏卵の実験があります。カルシウム分がほとんど入っていないエサしか与えられていない雌鶏が、ちゃんと卵を産むのです。鶏卵の殻は炭酸カルシウムなので、栄養学の観点から言えば、それを作り出すためには多量のカルシウムを必要とするはずです。しかし、鶏はいったいどこからカルシウムを調達しているのでしょうか。この不思議な現象は、科学的にはまだ解明できていないそうです。

     無肥料自然栽培で作物がじゅうぶんに育つこともまた、現代科学の知識をもってしても証明できないわけで すが、実際に無肥料自然栽培で豊かな実りを得ている例が日本じゅうにいくつもあるのです。科学で説明がつ かないものをすべて否定してしまうのであれば、これらの不思議な現象が解明されることは永遠にないのかも しれません。

     大地、雨、空気、太陽から無限に注がれた自然の恵みを、自らの必要に応じて取り入れることによって生長 していくのが植物の本来の姿であるはずなのに、いかんせん現代においてはこうした原初的な生命力が軽視さ れているような気がします。植物というのは、実際には私たちが考えるよりもたいへん強靭で、高等な生き物 なのです。

  • 化学肥料の普及

    肥料を畑に入れれば収量を増やせることがわかると、施肥をせずに作物栽培するという考えはほとんどなく なりました。化学肥料の使用についても同じことがいえます。
     化学肥料の歴史は第一次世界大戦中に遡り、ダイナマイトを作るためにドイツが生み出した空気中の窒素を 固定する技術を応用して、世界初の化学肥料(硫安:硫酸アンモニウム)が作られました。第二次大戦が終わ ると、大量に余った爆薬を有効活用しようと、化学肥料の使用が過剰に奨励された時期もありました。
     因みに石灰窒素肥料を1 トン製造するには、1.1 トンもの重油と110kW/h もの電力を使用するため、おびた だしい量の二酸化炭素を排出してしまいます。

    化学肥料を使用する以前はどうだったかというと、日本では厩肥(人糞尿)や魚かす等を畑に入れていたと いう記録があります。しかし前述の通り、そのような肥料による作物を他の動物が食べることはありません。(虫だけは例外です。あたかも「食べないほうがいいよ、代わりに食べてあげるからね」と言わんばかりにこうした作物を好んで食べます)

  • 雑草

     無肥料自然栽培に限らず、除草剤を使用しない栽培でもっとも大変なのは、雑草対策と除草でしょう。
     雑草については、無闇に目の敵にするのではなく、まずは雑草の存在意義を理解し、適切に対処することが 収穫量の増加や品質向上に繋がると言えるでしょう。
     雑草の起源は今から1 万~1 万5 千年前、氷河期の終焉した当時であると言われています。雑草は基本的に一 年生草本です。一年生草木は、冬の間を種の状態で過ごします。根が土を耕し、有機物を残すことにより微生 物が増殖し、小動物が増え、豊かな土壌が作り上げられてきた歴史があります。雑草は、不毛の地を豊かに変 えていく力を持っているのです。

    特に農地生態系における雑草の役割は「土を軟らかくし、また温め、適度な湿り気を与えること」 です。最終的に豊かな土壌がつくりあげられれば、そこにはもはや雑草が生える必要はなくなるの かもしれません。つまりは、固く冷たい土には草が生える必要があるのではないでしょうか。
     固い土にイネ科の雑草が多く生えるのは、硬い土を砕くためであり、マメ科の雑草は団粒構造を促進させるために生えてきます。ツベリヒユは乾燥した土壌に好んで生えますが、干ばつ時であっても、ツベリヒユが生えている近くの作物は干ばつ被害にあいにくい等という話も聞いたことがあります。

     雑草をどの程度管理するかは、栽培作物や土壌環境によって違ってきます。ニンジンを播種した後、「全く発芽しない!」と種屋にクレームを出す方がよくあります。ニンジンの場合、発芽期まではじゅうぶんな水分とならんで徹底した除草が必須なのです。一方、果樹であれば草生不耕起という方法でもできます。

     雑草はある意味偉大な存在ですが、人間が生きていくための収穫を得るためには適切な管理が肝要です。必 要に応じて除草したり、除草しないことで雑草の力を利用することもできるわけですから、性質をよく理解し た上で上手に付き合っていくことが何よりだと思います。

  • 排水・保水

     無肥料自然栽培をする場合、土壌においてまず注目すべきは【排水性】です。
     排水がよいということはつまり、【団粒化構造が進んでいる】【硬盤層が少ない】ということです。
     ここで重要になってくるのは、地温の確保(温度)、保水性の確保(湿度)、排水性の確保(乾度)の 3 点ですが、作物によって水を好むもの、嫌うものがあるため対応は異なってきます。

     緑肥を栽培する理由も、まず第一に「硬盤層hardpan」(土壌自体の重み、可給態窒素やリン、マグネシウムなどの過剰残存、重機の自重、ロータリ回転時の底部等によってできたと思われる土壌中の硬い層)の形成を軽くして排水性を確保するためです。ただし硬盤層がまったくなくなってしまっては保水に問題がでますので、あくまでも施肥によってできてしまった余分な硬盤層だけを取り除きます。

  • 根圏


    微生物は根の周りに集まってきます。 根の周囲1mm 以内(根圏)にはそれ以外の空間(非根圏)の500 倍の微生物が存在しています。
     施肥区と無施肥区の同一作物を引き抜いて見比べたとき、根量の違いが明らかにわかるようであれば、地中 の毛細根まで含めた根量の差は相当なものであると考えられます。つまり、微生物量、根酸量、さらに根冠も 含めた有機物量も一般栽培の場合とは著しく異なるわけですから、一般栽培と無肥料自然栽培を同様に考える ことはできません。